抄録
Ca2+ - Na+イオン交換を伴う土中の溶質移動について初期溶液と浸透溶液の濃度と組成が異なる条件に対してHP1による数値計算を行い,交換性陽イオンの部分的交換に焦点をあてて比較検討した.初期溶液,浸透溶液ともにCa2+とNa+の混合溶液の条件では,交換吸着する陽イオンの濃度前線の中程の位置において,溶液全電荷濃度cTと溶液電荷分率が初期の交換性陽イオンの電荷分率と平衡する.浸透溶液濃度が初期溶液濃度より低い場合には,初期の交換性陽イオン組成を維持するために浸透溶液のcTと溶液電荷分率が変化しない領域が現れる.初期溶液のcTと溶液電荷分率に近づく下層領域では,初期の交換陽イオンの組成を維持するようにcTと溶液電荷分率が変化する.Ca2+とNa+の移動形態は,イオン交換が生じない下層領域においても,Ca2+- Na+イオン交換特性により決まることを示した.