抄録
宇宙空間における土耕栽培を実現するためには,微小重力下における多孔質体中の水分挙動を明らかにする必要がある.落下塔は安価に利用できる一方で,微小重力継続時間が数秒以下と短いため浸潤実験の実施が困難であった.本研究では落下塔による短時間微小重力下で起こるわずかな浸潤を繰り返し観察することにより多孔質体の浸潤速度を測定する断続浸潤実験法を提案し,その適用性を検討した.0.4秒の微小重力環境でも間隙径が0.3 mmより小さい多孔質体であれば,断続浸潤実験により浸潤速度を評価できた.一方,間隙径が1.5 mm以上の毛管や粒径2 mmの多孔質体では慣性領域が無視できずに浸潤速度を過小評価するため,より長い微小重力環境が必要であることが明らかになった.断続浸潤実験は微小重力実験を安価に繰り返し行うことを可能とし,1 G条件下とは異なる水の挙動をより深く理解するための新たな可能性を開くと期待される.