抄録
鱗翅目昆虫では核を有し受精する「有核精子」と、核を持たず受精をサポートする「無核精子」の二型精子が存在する。家蚕精子形成後期に認められるスクイージング(peristaltic squeezing)現象により有核精子では細胞質、無核精子では核が精子束の後端より排除され精巣内での成熟精子が完成する。in vitroでのperistaltic squeezingはアクチンの重合阻害剤添加・除去により停止・再開が認められることからアクチンとの関連性が指摘されていた。本研究ではアクチンを特異的に検出できるファロイディン-ローダミンによりアクチンを、ヒトα-チューブリン抗マウス抗体と抗マウス-FITCにより精子鞭毛を間接蛍光染色し、ヘキストにより核を染色した。蛍光顕微鏡観察の結果、アクチンは有核、無核双方の精子束においてネットワークを形成し、peristaltic squeezingの進行に応じた形態変化を示すことが明らかとなった。また精子束内部に存在するアクチン小環(circlet)もperistaltic squeezingと同調して精子束を前部から後部へと移動した。これらの結果から、アクチンが家蚕のperistaltic squeezingを担う分子の一つであることが明らかとなった。