抄録
昆虫病原性糸状菌Metarhizium anisopliaeのミナミキイロアザミウマに対するスクリーニングの結果より、強い病原力を示したOE-2株と弱い病原力のUZ株を供試菌株とし、病原力と表皮への付着数との関係について調査した。OE-2株とUZ株のLC50値はそれぞれ2.5×105と7.5×105CFU/mlであり、接種直後の付着数は137.6と41.5分生子/匹となり病原力と付着数間には相関関係が認められた。次に付着数の経時的変化を調査したところ、両菌株とも24時間後には半数以上の分生子が脱落していた。以上の結果から、最終的に半数致死に必要な分生子付着数(LD50値)を推定したところ、OE-2株が1.2個、UZ株が2.4個となり2倍の差が観察されたことから、病原力には付着力以外の要因も関与しているものと考えられた。さらに、付着力を担う物質として分生子の表面を覆っている疎水性タンパク質hydrophobinに注目し、その塩基配列についても解析を行った。その結果、両菌株の塩基配列は98.2%一致し、さらにアミノ酸配列も95.6%一致したが、付着力の違いがhydrophobinの性状に起因するかどうかについては現在検討中である。