抄録
超臨界二酸化炭素は溶解力が強いので、コーヒーからの脱カフェインやホップ抽出などに利用されている。今回、超臨界二酸化炭素を用いて、カイコ幼虫クチクラからキチンを精製することを目的とし、クチクラから脂質を抽出する方法を検討した。二酸化炭素の臨界点(31℃,73Bar)以上の範囲で温度、圧力を変えて抽出を行った結果、脂質がクチクラから抽出できた。圧力を一定にしたところ抽出量は温度に依存して増加した。抽出された物質はアセトン、クロロホルム、ヘキサン、エタノール溶液に可溶だった。超臨界二酸化炭素を用いた場合、室温に近い温度でも脂質を抽出できるので、有機溶媒を加熱還流して回収する従来法と比べ、熱によるキチン分子の構造変化は抑制できる。カイコ幼虫キチンでは、甲殻キチンよりも熱に弱いので、クチクラからの脂質除去に適した精製方法と言える。また、有機溶媒を使わないので廃液処理が不要であること、減圧操作に伴い、二酸化炭素は気化して残留しないことなど、昆虫クチクラからの脂質抽出における利点が多い。さらに、二酸化炭素は無毒、無害、安価な物質なので、超臨界二酸化炭素による抽出法は環境に配慮した方法と言える。