抄録
家蚕繭層セリシンの主成分は、セリシンa, d, bの3種ポリペプチドであるが、これまでに報告されている2種のセリシン遺伝子との対応は明らかになっていない。今回、この対応関係を明確にするため、セリシンからペプチド断片を切り出し、アミノ酸配列分析を行った。
生繭から抽出・分離した各セリシンを4M尿素を含む緩衝液中、lysyl endopeptidaseで加水分解した。分解物のSDS-PAGEでは25kDa以下に明瞭なバンドが現れ、その領域におけるセリシンaとbのパターンが同じであったため、これらは同一遺伝子由来であると推察された。次に、セリシンa及びdの酵素分解物をエタノール沈澱及び逆相クロマトグラフィーにより分離・精製した。セリシンa由来2種ペプチドのN末から10残基を配列分析したところ、Ser1遺伝子(Garelら,1997)に極めて近い配列が存在したため、セリシンa, bが同遺伝子由来であることがわかった。他方、セリシンd由来の2種のペプチドは、セリシン遺伝子の既知領域に相同あるいは類似配列が見いだされなかった。従って、セリシンdとSer1遺伝子との対応は否定されたが、Ser2遺伝子(Michilleら,1990)が完全に解読されていないため、これとの関係は不明である。