抄録
演者らはカイコとエビガラスズメを用い幼虫斑紋形成の機構について研究している。両昆虫の斑紋は主にクチクラ中にメラニンが形成されることによる。この制御には幼若ホルモンが関与するが、その作用は2つの昆虫で全く異なる。今回はメラニン色素形成機構を解明する第一歩として、斑紋のメラニン色素を形成する顆粒フェノール酸化酵素 (gPO)を精製し性質を明らかにすることを試みた。gPOの精製にはメラニン色素を多く形成するカイコの突然変異系統である黒縞(pS)の幼虫を用いた。4眠幼虫を解剖し、新しく形成されつつある新クチクラを採取し、出発材料とした。まずgPOの抽出方法を検討したところ、不活性な状態で抽出が可能となった。このクチクラ抽出液から3つのカラムクロマトグラフィーを行い、gPOをほぼ単一に精製できた。この標品をSDS-PAGEで分析すると、分子量約79,000の位置にバンドが検出された。また、N末端アミノ酸配列を調べた結果、体液中のフェノール酸化酵素前駆体とは異なることが明らかになり、gPOが新規のフェノール酸化酵素であることが示唆された。