抄録
幼虫体腔内に他個体から切り出した皮膚片を移植すると、移植皮膚片は真皮細胞の切断部分が癒着しシストを形成する。演者らはこのシスト形成過程と皮膚に傷をつけた時の治癒過程を比較・検討し、真皮細胞の損傷修復と血球との関係を追究中である。シスト形成は 1). 皮膚片の切断面付近に血球が集合、2). 集合した血球が扁平化して血球塊を形成、3). 血球塊中に真皮細胞が伸張し断絶部をふさぐ、4). 真皮細胞からクチクラが分泌される、の過程で進行する。今回、さらに詳細に検討するため、移植皮膚片の細胞分裂を調べた。その結果、まず移植 8 時間後から、集合した血球が分裂したが、その後休止した。移植後 12 時間から 20 時間には皮膚片の真皮細胞層が全体にわたって分裂した。この分裂も移植 28 時間後には休止した。次に刺傷をつけた皮膚の周辺を調査をした結果、受傷 12 時間から 16 時間後に傷の周囲数百 μm の真皮細胞が一斉に分裂することが明らかになった。つまり、シスト形成過程で見られたように傷周辺の細胞が一斉に分裂した後成長することが推察された。現在培養実験を行い、創傷部分の閉塞に血球がどのように関与しているかを調べている。