抄録
カイコ表皮タンパク質BmCPG1はGGYGGという特徴的な反復配列構造を含み、外表皮の構成成分として脱皮期に特異的に発現する。この構造は表皮タンパク質以外にも、卵殻タンパク質、セメントタンパク質、植物の細胞壁成分や哺乳類のケラチンなど硬いタンパク質に広く保存されている。したがって、GGYGG構造がタンパク質の硬化と関係していると予測された。二枚貝の接着タンパク質の研究において、そのチロシン残基(Y)はチロシナーゼなどによって酸化され、Di-DOPA形成によってタンパク質間を架橋するとの報告がある。そこで、GGYGG構造を含むペプチドおよびその変異体を多数作成し、チロシナーゼを作用させたところ、GGYGG構造に依存してペプチド間の架橋が観察された。従来のS-S型タンパク質結合以外に、硬いタンパク質ではY-Y結合が広く使われていることが示唆された。さらに表皮形成、卵殻形成における、タンパク質の硬化とチロシナーゼの関係について考察する。