日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集
日本蚕糸学会第72回学術講演会
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昆虫培養細胞株の早期樹立のための新規培地の作出と細胞外マトリックスの効果
今西 重雄羽賀 篤信秋月 岳
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p. 50

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抄録

培養細胞株の樹立では初代培養期間をいかに短縮できるかがポイントであるため、我々は今回新たに初代培養用培地を開発すると共に供試組織のコラゲナーゼ処理と細胞外マトリックスの併用によるフラスコ面への細胞の付着と増殖促進を検討した。その結果、初代培養用培地として既存の数種の培地組成を参考に新たにMX培地(MX20、MX30)を開発した。MX30培地は鱗翅目昆虫以外の数種昆虫種でも組織培養時に細胞増殖を活発に促進し、血球系細胞、脂肪体、卵巣や精巣の各組織由来の細胞の増殖を促進し従来の培地よりも飛躍的な改善が認められた。また細胞外マトリックスとしてフィブロネクチン及びカイコ蛹殻から抽出した化学修飾、無修飾の各キチンをコーティングしたフラスコではいずれも組織の定着や細胞増殖に効果があった。個体から摘出した血球系細胞、コラゲナーゼ処理した脂肪体や生殖巣等の組織培養では組織特異性が認められるが、カイコ精巣などの組織からも細胞の遊出や増殖が可能であり、カイコ蛹殻抽出のキチンでは対培地含有量の0.001%∼1%の濃度範囲でも細胞増殖促進作用が認められた。以上をまとめると、マルチウエルプレートなど小規模培養においては初代培養期間を2∼3ヶ月間に短縮も可能となった。

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© 2002 社団法人 日本蚕糸学会
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