表面科学
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半導体表面での有機合成反応
金属酸化物・硫化物の光触媒作用
大谷 文章
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1991 年 12 巻 2 号 p. 79-84

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抄録

酸化チタンや硫化カドミウムの半導体粉末による光触媒反応を応用した有機合成反応について解説する。粉末や板状の半導体に外部から光を照射すると,半導体が光エネルギーを吸収して電子―正孔対が生成する。半導体表面に接する気相や液相中の成分が,この電子―正孔によりそれぞれ還元・酸化されるプロセスが半導体光触媒反応の基本反応である。この反応は室温・常圧という温和な条件で進行する。ここで詳しくとりあげる粉末状の半導体を用いる光触媒反応系では,ひとつの粒子上のきわめて近接した反応サイトで正孔―電子による酸化と還元がおこることが大きな特徴である。反応基質や条件をうまく選ぶことにより,ひとつの反応系内で酸化と還元,さらに他の化学反応を結び付けることが可能で,実際にさまざまな新しいタイプの反応が見いだされている。本稿では,光触媒反応の報告例を概観してその特徴を明らかにするとともに.有機合成への応用についての展望と課題を述べる。

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© 社団法人 日本表面科学会
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