表面科学
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グラファイト基板上有機エピタキシャル薄膜の界面における格子整合性
星野 聡孝磯田 正二小林 隆史
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1995 年 16 巻 11 号 p. 688-693

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抄録

 真空蒸着法によってグラファイト基板上に作製したさまざまな有機分子のエピタキシャル超薄膜のSTM像には, ある種のモワレとして解釈できる1次元周期的変調コントラストが現れていた。2次元界面において1次元的かつ周期的なモワレが生じるということは, この界面において特殊な格子整合関係が存在することを示している。特にグラファイト基板上での有機単分子層膜の場合, 変調コントラストの解析から2次元有機結晶のすべての格子点がグラファイト表面格子の (0,1) 線上 (もしくはこれと等価な格子線上) に位置していることが明らかになった。この場合の界面は2次元的には不整合であるものの, ある意味で1次元的な整合性が存在しているといえる。 理論的考察からこの格子整合関係を満たす界面はエネルギー的に安定であることが示され, 有機エピタキシーにおける配向発現においてこの格子整合関係が重要な寄与をしていることが明らかとなった。また, この格子整合関係を基にすれば, 有機エピタキシーの場合のように基板結晶と格子定数・対称性が大きく異なる場合においてもミスフィットを適切に定義することが可能となり, 有機エピタキシーにおける配向予測に応用しうることが明らかになった。これはエピタキシー現象を利用した分子集合状態制御への一つの指針になると思われる。

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