表面科学
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GaAs表面の硫化物処理効果とその表面の観察
南日 康夫
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1996 年 17 巻 9 号 p. 523-528

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抄録

GaAsは,未だに制御しきれていない材料である。Siと比べると,残留不純物は多く高濃度である。さらにストイキオメトリーのずれのために,空格子点や格子間原子あるいは逆格子位置原子などの構造点欠陥が,多い上に,互いに反応して複合体を形成する。この材料の表面は,謎であった。酸素も含め,多くの金属の付着に際し,表面のフェルミ準位は,ほぼ同じ位置にピニングされた。(多)硫化アンモニウム溶液による表面処理は,表面(界面)での欠陥密度を減少させることによって,この束縛をほどいた。鍵は,硫黄原子の膜が,酸素をはじめとする他の原子をGaAsから隔離することにあった。硫黄が,GaAsと結合する原子と形態は,多相であり,さらに詳しく表面を観察するとその超構造は多段階(マルチステージ)的に変化する。この多段階的変化が,実用的にどのような意義があるかは疑問であるが,理論的には面白い問題を提供している。硫黄による表面処理は,湿式・乾式で実行でき,実用的には有用であり,幅広い応用分野が開けている。また程度の差はあるが,他のIII-V族化合物半導体と他のカルコゲン分子の間でも,類似の効果が見られている。

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© 社団法人 日本表面科学会
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