表面科学
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軟X線吸収微細構造(XAFS)分光法による表面吸着分子の研究
横山 利彦
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1997 年 18 巻 1 号 p. 9-15

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抄録

固体表面上の分子の吸着は,長距離秩序を伴わないことが多くその構造解析は通常困難であるが,シンクロトロン放射光を用いたX線吸収微細構造(XAFS)分光法を用いればその局所:構造が精度よく決定できる。ここでは軟x線XAFS法によりSO2のNi, Pd, Cu単結晶表面上での吸着を調べた結果について述べる。これらの3種類の金属上での低温分子状吸着における挙動はいずれも著しく異なることが明らかとなった。Ni上ではSO2は低温で分子平面を表面平行に寝て吸着するのに対し,Pd上では低温で分子面は表面垂直である。Ni, PdいずれもSO2中のSが表面金属原子と直接化学結合を形成するのに対し,Cu上では,詳細な構造は未だ明らかではないが,SO2のO原子が主として金属との結合に関与していると考えられる。これらの違いは,SO2がσドナー性とπアクセプター性の双方を有し,金属の違いによって異なる相互作用形態をとることに起因している。一方,室温程度の吸着温度でSO2は表面上で反応しS, SO3, SO4等を生じる。Cu(100)上では定量的に不均化反応3SO2→S+2SO3が進行することがわかった。この系では走査トンネル顕微鏡測定を加えることで表面の全体像を観測することができた。

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© 社団法人 日本表面科学会
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