圏論は抽象数学から派生した代数的手法であるが,構文と意味の関係を厳密に定義できることと,可換図式や普遍写像性などによって,数学的構造を視覚的に扱うことができることから,ソフトウェア設計における意味の可視化に役立つものと考えられる.本論文では,情報システムを構成するデータ集合間のシグネチャを圏によって可視化することで,ソフトウェア設計の形式化を図る試みについて論じる.まず,ソフトウェアの統一意味モデルという概念を,GoguenとBurstallによって導入されたインスティチューションの概念を借りて説明し,この意味モデルがソフトウェア設計に占める重要性について論じる.そして次に,この意味モデルを圏を用いて可視化する方法について述べ,それがソフトウェア設計の形式化にどう役立つかを考察する.