プログラミング言語としての項書換えシステムに自己反映計算機能を付加した言語的枠組みとしてREPS(Reflective Equational Programming System)を提案する.REPSではリデックスの引数の各項,リデックスのまわりの文脈,および現在の書換え規則の集合をメタオブジェクトとみなし,構成子項を計算対象すなわちベースレベル・オブジェクトとみなしている.そして,前者を後者に変換するreification,およびその逆変換であるdeificationという自己反映計算の基本機能を,項書換えシステムの操作的意味である簡約関係を拡張することにより可能にしている.
最終回である今回は,MLの多相型システムの特例およびオペレーティングシステムとのインターフェイス機能を解説した後,プログラミングの例として,簡単な関数型言語のインタープリ夕を作成する.最後に,MLの基礎に関する文献を紹介する.
本稿では,グラフ理論的立場から見て全体の構造が理解しやすい表示を与える単純無向グラフの自動描画アルゴリズムを提案する.この手法では,任意の2頂点間の描画上の最適な距離は,グラフ理論上の距離を用いて決定される.任意の2頂点間に,引力,斥力が定義され,その力によるエネルギーは,レイアウトの不均衡さとして定義される.結果として,レイアウトの問題は,エネルギーの最小化の問題に帰着する.さらには,辺と頂点が重ならないために,辺と頂点の間に斥力を定義する.このグラフ自動描画アルゴリズムでは,頂点を広く均一に分配し,対称的な構造をもつグラフに対しては,対称的に描画でき,隣接関係・次数といったグラフの構造が理解しやすいレイアウトを得ることが可能となる.
本論文では,未体系情報の段階的な組織化と視覚的なブラウジングを支援する目的で,従来の一般的なハイパーメディアデータモデル「ノードリンクモデル」と可視化機構「オーバビュー」の課題を考察し,前述の目的に適した独自のハイパーメディアデータモデル「フレーム関係軸モデル」とそのモデルによって表現された情報群を可視化する機構「ハイパーチャート」について提案している.また,それらの実装可能性を検証するためにハイパーメディアシステム「CastingNet」を構築し,従来技術との比較評価を述べている.
圏論は抽象数学から派生した代数的手法であるが,構文と意味の関係を厳密に定義できることと,可換図式や普遍写像性などによって,数学的構造を視覚的に扱うことができることから,ソフトウェア設計における意味の可視化に役立つものと考えられる.本論文では,情報システムを構成するデータ集合間のシグネチャを圏によって可視化することで,ソフトウェア設計の形式化を図る試みについて論じる.まず,ソフトウェアの統一意味モデルという概念を,GoguenとBurstallによって導入されたインスティチューションの概念を借りて説明し,この意味モデルがソフトウェア設計に占める重要性について論じる.そして次に,この意味モデルを圏を用いて可視化する方法について述べ,それがソフトウェア設計の形式化にどう役立つかを考察する.
著者らは,対話型3次元応用ソフトウェアを構築するための機能合成システムの研究・開発を行っている.固有の機能をもつ3次元オブジェクトを画面上での直接操作により組み合せ機能合成することにより,より複雑な機能をもつ3次元オブジェクトを構築できるシステムを目指している.ここで問題となるのは,オブジェクト間の動的な機能合成をどのような機構で行うかという点である.著者らは,北海道大学で研究・開発を行っているIntelligentPadと呼ぶジンセティックメディア・システムの機能合成機構を採用している.すでに,IntelligentBoxと呼ぶプロトタイプ・システムを開発している.本論文は,IntelligentBoxシステムが採用した機能合成機構を概説し,いくつかの応用例を挙げてこの機能合成機構の妥当性を述べると共に,IntelligentBoxシステムの有用性を示している。