1996 年 13 巻 5 号 p. 5_397-5_411
すでに,属性文法における属性の領域割り当てを隣合う属性間の共有化の観点で捉えて,"同じ領域を共有する属性は常に1本のパス上に存在しなくはならない"という条件を加えると,割り当て問題が導出木レベルから生成規則レベル,さらには生成規則内の部分問題にまで還元できることを示し,その高速な領域割り当てアルゴリズム(シングルチェイン法)を提案した. しかしながら,この方法には上記の制約条件があるために,コピールールによって複数の属性に同じ値を複写するブロードキャスト型の意味規則の場合であっても,そのうちの1つの属性としか領域の共有を行うことができない.一般に,属性文法を用いて言語処理系を構成する場合,その意味記述の大きな割合をコピールールが占める.したがって,制約条件をなくしコピールールを考慮して領域の共有化を行なえれば,属性の評価効率に大きな効果が期待できる. そこで,コピールールを考慮して領域割り当てを行なうために,領域を共有しても値を破壊しない属性の集合"不変属性集合"を導入し,この不変属性集合を使って,コピールールを考慮した領域共有化が行なえるように制約条件を取り除きアルゴリズムを拡張したマルチチェイン法を提案する.制約条件を取り除いた場合でも,領域割り当て問題が導出木レベルから生成規則レベルに還元可能であり,実用的な時間内に(準)最適な解を求めることができる.本稿では,2つのマルチチェイン法のアルゴリズムを提案し,実例によってそれらの比較と有効性を示す.