1997 年 14 巻 2 号 p. 2_142-2_148
近年,ソフトウェア開発管理者およびユーザは,ハードウェア製品と同様に稼働率あるいは可用率といったソフトウェアのシステム性能に対して関心をもつようになってきた.特に,通信ソフトウェアでは可用性は考慮されるべき品質特性の一つとなっており,「ソフトウェアが特定の時点で要求仕様通りの機能を維持している度合」と定義されるソフトウェア・アベイラビリティを計測・評価することが重要視されるようになってきた.しかしながら,ソフトウェア・アベイラビリティを定量的に計測・評価するための技術・技法は,ほとんど提案されていない. 本論文では,ソフトウェアの挙動を,ソフトウェアが動作している稼働状態と,ソフトウェア故障が発生して動作できない保守状態を,交互に繰り返すものとして捉えたソフトウェア・アベイラビリティモデルについて議論する.ここで,ソフトウェア故障発生時間間隔およびフォールト修正時間間隔の平均値はフォールト除去が進むにつれて幾何級数的に大きくなると仮定する.この仮定は,デバッグ作業が進捗するに従って発見されるフォールトの複雑度が高くなることを反映している.ソフトウェアから修正・除去されたフォールト数の累積値に着目して,ソフトウェアの時間的挙動をマルコフ過程を用いて記述する.また,ここで構築されるソフトウェア・アベイラビリティモデルに基づいて,ソフトウェアの可用性を計測するために有用な定量的評価尺度を導出する.最後に,ソフトウェアのアベイラビリティ解析の数値例を示し,モデルパラメータがソフトウェア可用性に与える影響について考察する.