抄録
本論文では,実行可能な形式仕様記述において,テストによる検証可能性の実現と,仕様を伝えるための可読性の向上を考慮した記述スタイルを提案する.記述スタイルの検討には,モデル規範型の形式仕様記述言語VDM++を用いた.ソフトウェア開発においては,仕様と設計の役割を区別することが多い.2つの境界が曖昧であると,設計者は記述された仕様から仕様が規定する範囲と,設計が規定する範囲を読み取ることができない.また,実行可能な仕様記述では,動かすための仕組みと,仕様として伝えるための記述が混在する.この境界が曖昧であると,読み手は仕様の規定範囲を把握しながら,読み進めることが難しくなる.最初に,仕様と設計の境界部分として内部データ構造に着目し,仕様として規定しない型の隠蔽方法を示す.隠蔽の有無による可読性の違いを比較する.次に,仕様動作部と仕様伝達部からなる仕様記述において,VDM++が提供する記述スタイルから可読性の影響とテストによる検証可能性を考察する.最後に,現在進行中のプロジェクトではあるが適用事例の一部を報告する.