VMISS: 低レイヤー学習のための仮想マシン実装支援機構

抄録

現在の情報工学教育では，オペレーティングシステム(OS)やコンパイラなどの低レイヤーの学習において，抽象化した概念だけを知識として享受することも多く，機械語やアセンブリ言語といった複雑な部分は隠蔽されている．しかし，組み込みシステムやセキュリティなど，計算機で直接実行されるバイナリの解析や変更を必要とする分野では，知識だけで対応することはできない．また，CPUやOSなどの内部動作を可視化することで教育効果の向上を狙う研究も行われているが，それでも知識を超えて経験を得ることはできない．
そこで本論文では，低レイヤーに関する経験を提供するため，仮想マシンの実装を通した実践的な学習の提案を目標に，この学習を支援する仮想マシン実装支援機構，VMISSを提案し，その実装について報告する．この学習方法では，学習者自身が仮想マシンを実装する過程でバイナリやアセンブリ言語，そしてOSとの関係や役割を経験を通じて学習する．VMISSは，正しく動作する場合のログ出力，リソース比較によって正しい内部状態の通知を行い，仮想マシンの実装を支援する．また本研究では，学生を対象とした教育を実践し，有効性を確認した．