2026 年 43 巻 2 号 p. 2_10-2_19
本研究は,インターネットの運用における本質的課題である「制御不能な他者」との協調と対立を実践的に学ばせることを目的とし,新たなネットワーク演習を設計・実践したものである.具体的には,自組織で管理可能なLAN環境と,インターネットの基盤を担い,予測不能な外部要素と相互に影響しあうBGPネットワーク環境を対比させる.仮想化技術を用いて学習者をISP運用者に見立て,(1) 閉じたLAN環境内でのインシデント対応,(2) 学習者同士が「他者」として相互に接続する仮想インターネットの構築と,そこでのインシデントの観測,(3) BGPハイジャックという「他者」による攻撃の体験,(4)振り返りと考察,という4段階の演習を設計した.これにより,学習者は「制御可能な世界」と「制御不能な他者と共存する世界」のリスク構造の違いを体感的に学ぶ.本演習を実践した結果,参加した学生および教員の双方から肯定的なアンケート評価が得られ,本アプローチが他組織との調整や倫理的判断を含む実践的能力の育成に有効であることが示唆された.