本論文では,原子アクション(Atomic Action)の実現方式について議論する.はじめに,原子オブジェクト(Atomic Object)における原子性(Atomicity)を定義し,次にその実現法に関して議論する. 従来の原子性実現のためのアルゴリズムは,局所原子性に基づいて実現されていた.これは,従来の原子アクションの実現が,受動的なデータを対象としていたためである.この手法は,依存関係の一貫性保持のための遅れが生じるので,各原子アクションの応答時間を低下させてしまう.しかし,オブジェクトモデルが持つ能動的な性質を利用することにより,自然にオブジェクト自体がそれをアクセスする原子アクション間の依存関係を交換し合うことが可能となる.本論文では,この方式を協調原子性と呼ぶ.協調原子性は,局所原子性と比較して,計算量とメッセージ量を増加させるが,その分応答時間を向上することができる.そのため,今後,計算機やネットワークの速度が向上するにつれ,協調原子性の有効性が高まると考えられる.本論文では,局所原子性と協調原子性の性質について述べ,協調原子性に基づく原子オブジェクトの原子性を実現するためのアルゴリズムを提案する.