今日において福祉という営みは,倫理ではなく政治経済・社会政策の問題として扱われる.しかしながら,生活に困っている人や悲惨な生活状況にある人がいた場合に,手を差し延べるのが善いと考え行動することは倫理でもある.むしろ,倫理こそ福祉という営みの根源にあるものではないか.このような問題意識の下,本稿では,社会福祉における倫理の諸条件と内容を明らかにしている.まず,倫理という言葉を語源,前提,という観点から分析する.次に,従来とは異なる倫理の意味を明らかにしたLevinasの倫理を要約する.そして,Levinasの倫理を踏まえ,社会福祉における倫理として以下の3点を提示している.(1)他者と出会う(他者の次元を切り拓く).(2)審問と責任.(3)他者の優先権を認めるという人間の可能性.