社会福祉学
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被占領期における林市藏の思考と行動 : 方面委員制度から民生委員制度への移行期を中心として
小笠原 慶彰
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2012 年 53 巻 1 号 p. 91-103

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抄録

林市藏は,第二次大戦敗戦後に全日本方面委員連盟の第4代会長となった.しかし,その直後に連盟が全日本民生委員連盟になり,会長を原泰一と交代し連盟初代顧問となった.被占領期の方面委員・民生委員制度は,敗戦直後の緊急援護,生活保護法施行,民生委員令施行,民生委員法施行,「三団体統合」等の課題に連続的に当面した.林は,生活保護実施の補助機関として公的輔導に傾斜した方面委員・民生委員活動には親和性を抱かなかった.民生委員令下では,実費弁償どころか少額とはいえ手当てを支給するという考え方が有力となり,実際に実行された.林は,実費弁償でさえ徹底して否定していたため,このような推移は,受け入れ難いことであった.しかし,その後の協力機関化に際しては,林のGHQ関係者への説明も効果があり,公務員色を弱め得た.このように方面委員制度から初期民生委員制度への移行は,林の主張した方面委員精神を否定した結果ではない.

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© 2012 一般社団法人 日本社会福祉学会
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