社会福祉学
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保健衛生調査会における「精神病者」対策の検討過程分析
宇都宮 みのり
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2014 年 55 巻 1 号 p. 23-35

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抄録

保健衛生調査会は,国民死亡率の増加と慢性伝染病の蔓延を背景に1916(大正5)年に発足し,衛生関連の主要な立法に影響を及ぼし,1939(昭和14)年に役割を終える.本研究では同調査会における「精神病者」対策の議論の焦点を明らかにするため3期に区分し分析した.研究成果は以下のとおりである.第I期には,「精神病者」の治療と収容のための施設建設を緊急課題として,全国調査と精神病院法の立法提案が実施された.第II期には,産業経済の発展に寄与することが国民に求められるなか,精神的衛生とその発生予防の視点が登場する.第III期には,「国力増強」が目指されるなか,「精神病者」は優生学と断種法の議論の対象となる.「精神病者」対策の議論は「保護と公安」の両側面を有しながら,他法律との関係や国家の目標という圧力のもとで徐々に「公安」に傾き,「治療と収容」,「衛生と予防」,そして「優生と断種」へと展開した.

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© 2014 一般社団法人 日本社会福祉学会
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