社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
Print ISSN : 0911-0232
犯罪加害者家族に対する捉え直しの試み : シンボリック相互作用論における役割アイデンティティの視点から
深谷 裕
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 55 巻 1 号 p. 36-48

詳細
抄録

本研究の目的は,シンボリック相互作用論における役割アイデンティティを鍵に,犯罪を契機として,加害者家族の生活全般における自己や状況に対するコントロール感がいかに変容するのかを明らかにすることである.本研究を通して,加害者家族の多様な経験を捉える視座として,役割アイデンティティ概念がもつ可能性を提示した.具体的な方法として,まず,二つの事例について,対象者が自らのライフストーリーを語る際に採用している役割アイデンティティに注目した.次に,各役割アイデンティティにおけるコントロール感の変化を考察した.さらに,コントロール感の変化を左右する心理的および社会的要因を検討した.情報の非対称性を背景に,対象者が使い分けるどの役割アイデンティティにおいても,事件発覚後のコントロール感は弱まる傾向にあった.しかし対象者は困難な経験をしながらも,他者との相互行為を通して,お互いに理解を深めたり生活の質を上げていた.

著者関連情報
© 2014 一般社団法人 日本社会福祉学会
前の記事 次の記事
feedback
Top