社会福祉学
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児童扶養手当制度の成立過程における制度創設の経緯 : 1959年から1961年までの国会審理および新聞報道からの考察
堺 恵
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2015 年 55 巻 4 号 p. 14-29

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抄録

本研究の目的は,児童扶養手当制度の成立過程における制度創設の経緯について考察することである.1959年から1961年までの国会審理および新聞報道の内容を分析したところ,児童扶養手当制度には,母子福祉年金の補完的制度として,かつ児童手当創設の先行制度として創設されたという経緯のあることがわかった.そして児童扶養手当制度の創設に至った社会的背景には,次の3点があることがわかった.1点目は,全国未亡人団体協議会が生別母子世帯への年金支給を求めていたことである.2点目は,母子福祉年金の予算が,厚生省の推計のミスにより大幅に余ったことである.3点目は,児童手当制度創設が当時の政策課題であったことである.また,『全国母子世帯調査結果報告書』で報告された収入に関する調査項目とその実施状況をみると,児童扶養手当制度の創設当時,生別母子世帯の生活実態に関する十分な分析を欠いたまま,制度が創設されていたということも確認できた.

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© 2015 一般社団法人 日本社会福祉学会
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