本研究は,知的障害者入所施設によるグループホームへの移行を前提とした施設解体を受け入れた家族がこれをどのように捉えたのかを自立規範に焦点を当てた質的調査によって明らかにした.第一に,移行前は,家族は施設からの移行は生活・就労面の自立を意味するものと認識し,ここには障害者自立支援法に関わる施設側の説明も影響していた.この結果,家族は子の自立困難性に伴う不安感や自宅復帰への懸念を抱えた.しかし,家族は職員への信頼や遠慮ゆえに施設側の決定に委ねるという受動的態度が見られ,これは家族が自立規範に基づき養育すべきだという家族規範が影響していた.第二に,移行後はまず,グループホームは生活・就労面の自立を前提とする場と認識されていた.次に,自立困難になる将来の予測不可能性に伴う不安ゆえに施設入所を容認/肯定する状況が見られた.本研究は自立規範の相対化と家族支援による脱施設化政策の必要性を示唆する.