社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
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論文
介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―
藤江 慎二
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2020 年 60 巻 4 号 p. 56-67

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抄録

本研究は,介護老人福祉施設の介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセスを明らかにすることで,不適切な介護の予防的研究および実践に寄与することを目的とした.研究方法には,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.分析の結果,介護職員は〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態で業務につき,そのなかで〈終わらない業務への焦り〉,〈利用者への苛立ち〉が生起していた.これらには〈他職員介護による苛立ち・負担〉という苛立ちを増加させる要因があった.そして最終的に介護職員の〈利用者への苛立ち〉は〈自分自身への苛立ち〉となり,諸種の焦りや苛立ちが悪循環していくプロセスとなっていた.このような現状を介護職員だけの問題にせず,職員,施設,行政機関などが個々の役割を果たし,不適切な介護の予防に向けた総合的な取り組みを検討していくことが必要であると考えられた.

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© 2020 一般社団法人 日本社会福祉学会
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