2020 年 61 巻 1 号 p. 32-43
本研究は,養介護施設従事者等による不適切なケアに対する効果的な予防策について明らかにすることを目的とした.調査はA県の特別養護老人ホーム,認知症対応型共同生活介護,有料老人ホームの介護職員5,307人を対象に,アンケートを配布し行った.欠損のあったデータを除く2,149人分を有効回答とした.データの分析には因子分析,ロジスティック回帰分析を用いた.その結果,有意な影響を与える予防策が不適切なケアの種類や施設種別によって異なることがわかった.特別養護老人ホームでは,例えば「職場の虐待への対策」など職場に関連する予防策も有意な影響がみられた.一方で,予防策の「職員の特性」は,施設の種別にかかわらず共通して予防に寄与していた.これらの予防策に取り組むためには,「職員の特性」に対する働きかけも含め,職場全体で虐待や不適切なケアを防ぐための対策を講じていく必要があると考えられる.