社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
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論文
戦後千葉県における特殊里親部落の養育実践――「特殊児童」問題に里親制度が果たした役割と限界――
田中 友佳子
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2020 年 61 巻 3 号 p. 40-54

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抄録

本稿は,1953(昭和28)年から1970年代にかけて千葉県で行われた,特殊里親部落に焦点を当てたものである.精神薄弱児施設収容者の年齢超過など「特殊児童」の児童から成人への接続問題が深刻化していた当時,特殊里親は「特殊児童」を受託,農作業等を指導しながら養育し,「特殊児童」の自立自活を目指した.本稿では,この特殊里親部落の成立背景と委託経緯,特殊里親による養育について検討し,「特殊児童」問題に対して里親制度の果たした役割と限界を明らかにした.特殊里親は,施設・家庭と,社会との間の「仲介人」の役割や,義務教育へと「特殊児童」を繋ぐ役割も果たし,リービングケアやアフターケアの場となった.一方で,就労先が見つからない場合には終わりのみえない「請負人」となり,一生面倒を見る「日本調のコロニー」となることが期待された.里親の経済力と献身性に依存した特殊里親部落の実践は,篤志家が責任と負担を一手に担ってきた戦後日本の里親制度の限界を示している.

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© 2020 一般社団法人 日本社会福祉学会
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