2023 年 64 巻 1 号 p. 46-60
本研究の目的は,管理職のMSWが日常的に行う管理・マネジメントプロセスを明確化することと,そうした管理・マネジメントのなかで管理職のMSWが抱える困難や,管理職としてのMSWの独自性を明らかにすることである.特定の公的団体が運営する病院に勤務する,部下を持つ課長職であるMSW10名に半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析した.その結果,管理職としての権限の発生を起点に,【MSWの組織の維持】に向かってスキルや資源を活用し困難を乗り越えようとする円環構造のプロセスが明らかになった.さらに,管理・マネジメントにおける困難を乗り越えるために部下や院内の管理職・元上司,院外に相談する工夫が認められた.これらは管理職のMSWにおける職責や役割の曖昧さを転用した独自の取り組みの可能性がある.一方で,管理・マネジメントの学習機会や資料の提供不足といった課題も示された.