抄録
内視鏡を用いた手術は瘢痕を最小限にできる整容的な手技として広く行われているが,組織採取に関する報告は乏しい。そこで,われわれが行ってきた内視鏡下組織採取について,採取組織,採取時間,組織生着,合併症などについて検討したので報告する。1996年から2003年までに30例に行い,採取した組織は大網9例,広背筋弁9例,大腿筋膜6例,空腸5例,腹直筋弁1例であった。採取時間は筋弁で約90分,筋膜約40分であった。大網・空腸では内視鏡下での操作が約30分で,実際の採取は約60分であった。採取した組織の生着に問題はなかった。観察期間は平均18ヵ月であった。術後合併症は頚椎神経不全麻痺,大腿部のしびれ,臍部の縫合不全を各1例認めたが,保存的に治癒した。術後腹部合併症はみられなかった。また,採取部には肥厚性瘢痕を認めず再手術を要する症例はなかった。内視鏡を用いた組織採取は時間がやや延長されるが,採取部の障害を最小限にできることが示唆された。