創傷
Online ISSN : 1884-880X
ISSN-L : 1884-880X
原著
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)定着創の
周術期抗菌薬の選択について
草竹 兼司
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2011 年 2 巻 4 号 p. 147-153

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抄録
 近年,高齢化とともにさまざまな合併症をもつ患者の創傷の治療にあたる機会は増えてきている。このような患者の創傷の治療期間は長期化することが比較的多く,その創に感染徴候を認めなくても培養でMRSAを検出することは少なくない。そしてMRSAを検出した創傷に対して外科的治療を行う際に用いる抗菌薬の選択についてはいまだコンセンサスが得られていない。われわれは,創部からMRSAを検出しても局所に感染徴候を認めない創傷(以後,MRSA定着創)13症例の創閉鎖の手術に際して,通常の手術と同様に第一世代セフェム薬を予防抗菌薬として用いて手術部位感染の有無を検討した。結果,12症例は術後にMRSA感染を起こすことなく順調に経過し治癒を得た。1例では術後に皮弁の壊死およびMRSA感染を認めたが,その原因は手技的なものであると考えた。以上より,MRSA定着創の周術期に用いる抗菌薬は清潔手術における通常の予防抗菌薬の使用で十分と考える。
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© 2011 一般社団法人 日本創傷外科学会
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