抄録
感染創の基礎的研究を行うには,簡便で一定期間持続する感染創モデルが必要である。単純に黄色ブドウ球菌を液体培地に混濁して皮下に局所注射するだけでは,3日間で感染が消退してしまう。そこで,この培地にさらに寒天を添加して半流動培地として皮下に局所注射を行い,良好な結果を得たので報告する。
半流動培地に黄色ブドウ球菌 (5 × 108 colony formation unit/ml) を混入すると,寒天が適度なバリアとなり,この中で移植後 3 日までに細菌のコロニーが形成された。移植後 5 日ではコロニー数が増加すると同時に膿瘍が形成され,移植する細菌数を増加するとこの膿瘍の大きさが細菌数依存性に増大した。また,腹部,背部,頭部のいずれも感染創ができ,術後 9 日目まで感染が持続した。以上より,本モデルは細菌を混入した液体培地に寒天を混合し半流動培地とするというきわめて簡便な方法で 1 週間以上感染が持続でき,有用と考えられた。