創傷
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特集2 人工真皮の有効利用
当院における人工真皮の使用状況
藤岡 正樹
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2013 年 4 巻 1 号 p. 16-27

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抄録

人工真皮の出現で外傷治療は簡便な処置で創閉鎖ができる可能性がひろがったが, その使用基準は術者の経験に負うものが大きく, 標準的な使用方法は確立されていない。 今回人工真皮の使用症例を疾病別に分析して, 人工真皮の有用で適正な使用方法を検討する。 2006年からの 5 年間で120名に人工真皮による創傷治療を行った。 内訳は外傷28%, 先天奇形28%, 潰瘍22%, 腫瘍切除生検後14%, 熱傷 8 %であった。 これらに対して当院での人工真皮使用の利点を考察した。 外傷に対しては, 骨露出創に人工真皮を貼付することで Gustilo-AndersonⅢB,C の創を ⅢA とすることができ, 皮弁を使わずとも創閉鎖が期待できるようになった。 先天奇形に対しては口蓋骨露出創や髄膜瘤閉鎖後の皮弁恵皮部に対して貼付し, 早期創閉鎖や創の拘縮予防に効果をあげている。 皮膚腫瘍の切除生検施行後, 人工真皮を貼付することで病理結果が出るまでの間, 創傷処置の簡便化と疼痛軽減が図れる。 難治性潰瘍症例に対し人工真皮とbFGFの併用療法は有用な治療法である。 これらの皮膚欠損創に対して人工真皮を利用することは有用であると思われたが, 植皮術を要する, 感染創には使用しにくい, 治療期間が長くなる等の短所もあり, 適正な使用がなされることが望まれる。

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© 2013 一般社団法人 日本創傷外科学会
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