抄録
人工関節置換術後皮膚壊死をきたし,人工関節の露出を伴うことがある。通常,治療は人工関節を抜去し,感染の鎮静化後に人工関節を再置換するが,なかには人工関節の再置換ができずに関節機能を喪失する症例もある。われわれは,人工関節を抜去しなくても創部の感染の鎮静化が見込める症例を対象に,人工関節を温存したまま皮膚潰瘍を再建している。われわれの人工関節置換術後の皮膚潰瘍に対する治療方針を示すとともに,自験 4 例 5 関節の臨床経過について報告する。4 関節は人工関節の露出を伴っていたが,有茎筋皮弁で潰瘍部を閉鎖し,18ヵ月~61ヵ月の経過観察で感染の再燃を認めない。1 関節は筋膜までの潰瘍であったが,植皮術後,感染コントロールがつかなかったため,人工関節を抜去した。自験例より,人工関節を温存したまま創部の感染コントロールを行い,潰瘍部を閉鎖する方法は有用と考えられた。