抄録
自家培養表皮ジェイスはヒト細胞を用いた日本初の製品であり,重症熱傷の創閉鎖に使用される。2009 年に保険収載されて 5 年が経過し,これまでに全例を対象とした市販後調査によって多くの情報が蓄積されつつある。自家培養表皮の製造で非受傷部位から採皮された面積は平均 8 cm2,1 患者の使用枚数は平均 24 枚であり,採皮面積に対して 240 倍程度の面積の創面を覆うことができた。受傷から採皮までは平均 8.6 日であり,採皮時期が遅延した症例で培養工程に細菌汚染が発生したことがあった。これまでの調査では,自家培養表皮の移植前に人工真皮を用いて移植床を形成する症例が,屍体同種皮膚を用いるより多かった。最近は自家網状分層植皮と自家培養表皮を同時移植するハイブリッド法も増えている。今後は,自家培養表皮を用いた熱傷治療において,自家植皮と併用する意義を検証するとともに,人工真皮や屍体同種皮膚で再構築した移植床に対する手法を標準化する必要がある。