日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 9PF-02
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ヒトABCトランスポーターABCB1とABCG2のSNP機能解析
*石川 智久笠松 志保櫻井 亜季萩原 祐子
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キーワード: p-1, t-8, p-19
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抄録
[目的]ヒトゲノム解析によって、これまで48個のヒトABCトランスポーター遺伝子が発見された。最近我々は新規ABCトランスポーターABCC11、 ABCC12、ABCC13のクローニングに成功し、ヒトABCトランスポーター遺伝子の種類はほぼ確定した。今後、ABCトランスポーターの薬物による誘導や組織特異的発現メカニズム、および遺伝子多型と薬剤応答性との関連の研究が重要になると考えられる。本研究においては、薬物輸送に関係するヒトABCトランスポーターのうち特にABCBとABCG2に関して、アミノ酸変異をもつSNPの基質特異性に及ぼす影響を機能スクリーニング系で調べた。[方法]ヒトABCB1とABCG2のcDNAをクローニングし、site-directed mutagenesisによってSNPを導入した。そしてバキュロウイルス・ベクターを用いてSf9昆虫細胞に発現させた。ウイルス感染後3日目に細胞を集め、細胞膜画分をショ糖濃度勾配遠心法により調製した。細胞膜画分におけるヒトABCB1およびABCG2の発現は、特異的な抗体を用いたWestern blot法により確認した。96wellプレートを用いたATPase活性測定装置を用いて、既存の医薬品約50種類に関してABCB1の基質特異性のプロファイリングをおこなった。また、ABCG2に関しては、ベシクル輸送方法により遺伝子多型と機能(基質特異性)との関係をin vitro実験で解明した。[結果/結論] ヒトABCB1に関して、アミノ酸変異をともなう変異体として、N21D, N44S, F103L, V185G, S400N, A893S, A893T, M985VをSf9細胞に発現させた。そしてWestern blot法により、それらの形質膜での発現を確認した。ATPase活性測定により、アミノ酸変異によって基質に対する親和性に違いが認められた。一方、ヒトABCG2に関しては、V12M, Q141K, Q166E, G188G, F208S, S248P, E334stop, R482T, R482GをSf9細胞に発現させた。獲得変異であるR482Tと R482Gは、野性型(Arg482)と大きく基質特異性が異なることが見つかった。個別の医療においては、機能変化を伴う一塩基多型(f-SNP)の同定が極めて重要であると考えられる。本研究はファルマスニップコンソーシアムとの共同で実施された。
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© 2003 日本薬物動態学会
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