日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 9PF-04
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ABCG2変異株の機能とSN-38耐性
*吉川 恵美三友 秀之池上 洋二佐野 和美吉田 久博沢田 誠吾石川 智久
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キーワード: m-5, t-8, ABCG2
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抄録
[目的] 我々はヒトDNAトポイソメラーゼI阻害型抗癌剤塩酸イリノテカン(CPT-11)の活性本体SN-38の獲得耐性にABCG2が直接関与することを最近報告した (Nakatomi K.et al., Biochem Biophys Res Commun., 288, 827-832, 2001)。今回ABCG2のSN-38耐性に関わる基質認識機構の解析を目的に、[Arg482]-ABCG2及び基質特異性変化が認められるアミノ酸変異株[Gly482],[Thr482]-ABCG2における薬剤輸送活性の変化について検討を行なった。 [方法] 1) 過剰発現株の作製:ABCG2過剰発現細胞株PC-6/SN2-5H2よりABCG2をクローニングし、pcDNA3.1vectorに組み込んだ。リン酸カルシウム法によりヒト胎児腎細胞株HEK293に遺伝子導入した。2) 蛍光免疫染色:抗体にABCG2モノクローナル抗体BXP-21を用いた。3) 薬剤感受性試験:抗癌剤10種類を用い、MTT 法により行った。4) 細胞膜調製:各細胞を破砕後、ショ糖密度勾配遠心分離により調製した。5) 膜ベシクル輸送実験:膜小胞をSN-38或いはSN-38glucuronide(SN-38glu)を含む基質液と5mM ATP存在下37℃で反応を行った。膜小胞内薬剤量はHPLCで定量した。[結果] 1) 蛍光免疫染色により、ABCG2が遺伝子導入細胞株の形質膜に発現していることが観察された。2) 薬剤感受性試験よりSN-38では[Arg482]に、またドキソルビシン、ダウノルビシンでは[Thr482],[Gly482]に、一方ミトキサントロンでは3種ともに耐性が認められた。3) SN-38及びSN-38gluは[Arg482]においてATP依存的な輸送を示したが、[Gly482],[Thr482]ではATP依存性輸送は観察されなかった。[結論] 482番目アミノ酸変異は基質特異性に変化を与え、[Arg482]はSN-38耐性に重要であることが明らかとなった。ABCG2変異に対する抗癌剤耐性の情報は、ABCG2変異に伴ったオーダーメイド医療に貢献できるものと考える。
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© 2003 日本薬物動態学会
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