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命のバトン〜小児脳死下臓器提供
植田 育也
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2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 318_1

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抄録

小児が死亡する頻度は成人に比して低く、医療者がその死に直面する機会は少ない。よって小児医療従事者には「看取りのケア」の経験が不足している。その中で、治療が困難になり救命の見込みが失われたとしても、現場では「頑張るのが当たり前」との声が大勢を占めたり、また「家族の気持ちを考えると厳しい話は……」と終末期であるかの検討が避けられてしまう実情がある。命を失いつつある小児の「最善の利益」が損なわれない様に、まず小児医療従事者自身が小児の終末期についてしっかりと考えていくことが必要である。そして看取りのケアをしっかりと行う中で、臓器提供という選択肢が見えてくるのである。「急性期」かつ「小児」の終末期を考える上では、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会による「救急・集中治療における終末期医療に関する提言(ガイドライン) 」、および日本小児科学会による「重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン」が参考になる。脳死は終末期の類型の一つであるという考え方を踏まえ、終末期の小児と家族のために、救命できないという事実をしっかり伝えた上で、本人の「最善の利益」とは何か、医療従事者からの提案をもとに、家族としっかり話し合い、結論を導く必要がある。この様な、小児医療従事者側の心構えと、家族の尊い決意から脳死下臓器提供に至った自験例を供覧する。

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