2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 340_2
【目的】我々はマウス異所性心移植モデルにおいて、heat shock protein 90 (HSP90)阻害剤・17DMAGのグラフト灌流により急性拒絶反応が抑制され、生着期間が延長することを示した。一方で17DMAGは最近、老化細胞除去薬としても注目されている。今回、17DMAGグラフト灌流による老化細胞除去効果につき検討した。【方法】ドナー:C57BL/6(H-2b)、レシピエント:BALB/c(H-2d)としてマウス異所性心移植を行った。17DMAG 250 µg/mLを含むヘパリン溶液をグラフトに灌流した後に移植する17DMAG灌流群、ヘパリン溶液のみを灌流した対照群を作成した。移植後3日目および5日目のグラフトを採取し、組織学的検討および定量的PCR法による検討を行った。【結果】組織所見では両群間でマクロファージ浸潤に差は見られなかったが、好中球および樹状細胞浸潤は17DMAG灌流群で抑制されていた。また、p16INK4a mRNA および p21CIP1 mRNAは、3日目に17DMAG灌流群で発現が亢進していたが、5日目では対照群で発現が増強され、17DMAG灌流群では抑制されていた。【結論】17DMAG灌流はグラフト内のサイクリン依存性キナーゼの発現に作用し、老化細胞除去効果を持つことが示唆された。この機序が生着期間延長に関与している可能性が考えられた。