2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 367_3
今回我々は血液型適合生体腎移植後早期に移植腎尿管結石による水腎症をきたした一例を経験した。症例は47歳女性、IgA腎症を原疾患とする末期腎不全に対して夫をドナーとした透析未導入の血液型適合生体腎移植を施行。ドナーの左腎を完全後腹膜鏡下に摘出し、レシピエントの右腸骨窩に移植した。移植腎の尿管は1本で、4㎝の粘膜下トンネルを形成し膀胱尿管新吻合を行った。術後経過は問題なく、Cr 3.94→0.81 mg/dlまで改善し術後14日目に退院となったが、術後約1か月でCr 1.38 mg/dlまで上昇し、腹部エコー検査と腹部CTにて移植腎の腎盂・尿管の拡張と膀胱尿管新吻合部近傍の石灰化を認めた。移植腎尿管結石による水腎症と判断し、尿管ステントを留置したところ水腎は消失し、Cr 0.99 mg/dlまで速やかに改善した。その2か月後には結石は完全に消失しており、ステントを抜去したが、再度水腎の出現とCr上昇を認め、尿管ステントを再挿入した。石灰化は消失していたが、膀胱尿管吻合部に狭窄を認めたことから、後日バルーン拡張を施行した。その後、水腎の再燃もなく、Cr 1.00 mg/dl前後で腎機能は安定している。本症例は吻合部狭窄を原因とした結石形成であった可能性があるが、稀な病態である移植尿管結石について文献的考察を加えて報告する。移植後の膀胱尿管吻合部の結石について報告する。