2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s286
【背景】
生体ドナー肝切除の術後胆汁漏の根絶を目指し,当科では2017年よりglissonean approach + liver hanging maneuver法(GA+LHM法)を導入した.
【方法】
GA+LHM法:1)右葉グラフトは右一次グリソン+G1r,左葉系グラフトは左一次グリソン+G1lを一括確保.2)胆管造影により切離予定位置をマーキング.3)右葉,左葉+尾状葉グラフトは尾状葉峡部背側~IVC前面~右,中肝静脈間をテーピング,左葉,外側区域グラフトは門脈臍部のArantius管起始部末梢側(*)で左一次グリソンを一括確保し,右,中肝静脈間から*へテープを誘導.4)テープをガイドとして肝実質を離断.5)左葉,外側区域グラフトでは左一次グリソン+G1lのテープから左一次グリソンを引き算し,残ったG1lを処理.6)肝離断終了後にグラフト肝側の肝動脈,門脈,胆管を含む肝門板を個別に確保,胆管造影後に肝門部脈管を切離,続いて肝静脈を切離しグラフト肝摘出.
当科の生体ドナー肝切除におけるGA+LHM法の有用性を評価すべくClavien–Dindo分類に従い術後短期成績を解析した.胆汁漏の診断はISGLSの定義に従った.
【結果】
GA+LHM法は41名すべて(右肝25例,左肝15例,左肝3区域+尾状葉1例)で安全に施行可能で初回退院までIIIa以上の合併症なく,胆汁漏の発生を認めず.1例(2%)で胆管狭窄を来し,再入院後に内視鏡下ステント留置を要した.
【考察】
GA+LHM法は肝門板周囲の剥離を必要最小限に留めることで,残肝胆管の熱損傷・機械的損傷を回避し胆汁漏を根絶し得る.