移植
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生体肝移植ドナー安全性の検討
大野 康成三田 篤義増田 雄一野竹 剛窪田 晃治清水 明副島 雄二
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s287

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抄録

【背景】わが国は、いまだ生体肝移植が主流であり、生体肝移植ではドナーの安全性確保が最優先事項である。【対象と方法】生体肝移植ドナー321人のうち、ドミノ肝移植第一レシピエント9例を除く312例を対象とし、後方視的に術後合併症について検討した。【結果】グラフトは外側区域113例、左葉188例、右葉10例、後区域1例。術後早期合併症は、Clavien-Dindo(CD)分類IIIA(n=37: 11.8)%、IIIB(n=1: 0.3%)、IV(n=1: 0.3%)。胆汁漏はn=18(5.7%)、胆管狭窄はなかった。CD IV(n=1)はドレーン感染による敗血症性ショックでICU入室となったが、循環管理、抗生剤投与により改善し、保存的治療により完治した。CD IIIB(n=1)は術中大量出血に対し開胸、体外循環を要したが、術後25日で軽快退院した。本症例のみ術中に日赤血による輸血を要した。CD IIIA症例の約9割(n=33)は胃軸捻転症で内視鏡的整復術により軽快し、その他、胸水等4例に胸腔穿刺を行った。胃軸捻転予防に胃十二指腸に癒着防止剤を貼付し、最近8年間CD IIIA以上の合併症は認めていない。術後1年以内の再手術症例はなく、それ以降に腹壁瘢痕ヘルニア、イレウスに再手術を行った。【結語】CD IIIB以上の重篤な合併症を認めたが、死亡や重篤な後遺症を認めず、安全に手術を行い得た。

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