移植
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経験から得たレシピエント移植コーディネーターの在り方
山本 真由美
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s30

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抄録

A病院では、1997年より肝移植プログラムが開始となり、2020年末までに333例の肝移植が実施された。自身がレシピエント移植コーディネーター(RTC)として活動を開始した2006年は、生体肝移植実施100例を超えた頃であった。活動開始当初に、移植実施に至るまでの意思決定支援や関係各所への調整がスムーズに行えず、レシピエントやドナー候補者、家族らに辛い思いを残してしまったことを経験した。またドナー候補者の術前体調管理ができていず移植が延期になったり、移植後再飲酒を繰り返す症例への関わりに難渋したことを経験し、RTCとして移植医療に携わる責任の重さとそれに立ち向う覚悟を持った。その後は、円滑かつ安全な移植医療が行われるように、RTCとして何を大事にすべきかを自分に問い続けながら役割を発揮してきた。特に重視しているのは、移植医療における倫理的課題であり、移植医、医療関係者、専門家、複数のRTCらと最善の解決に向けて十分に検討するようにしている。RTCには、倫理的感受性、問題解決能力、調整能力、コミュニケーション技術、そして困難に立ち向かう意志の強さが必要だと考える。時代の変遷を経て、長期生存症例の増加や移植適応疾患の変化、以前には考えられなかった独居で頼れるキーパーソン不在の紹介症例の増加などがあり、取り組む課題も変容している。RTCの在り方とは、その役割をその時代に合わせて柔軟に変化させていくことが重要であると考える。

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