移植
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生体肝移植による肝細胞癌の適応拡大症例の予後向上にむけて
谷峰 直樹大平 真裕今岡 祐輝佐藤 幸毅井出 隆太山根 宏明橋本 昌和黒田 慎太郎田原 裕之井手 健太郎小林 剛田中 友加大段 秀樹
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s349

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抄録

All Japan dataから提唱された5-5-500基準とミラノ基準(MC)を合わせたJapan基準(JC)が保険収載された。2001年以降のHCC肝移植自験例119例で、JCを逸脱した15例(JC out)は、JCを満たした(JC in)にくらべ、有意に予後不良であった(5yDFS, 14.3% vs 70.0%, p<.0001)。現行のJCは非常に優秀な適応拡大基準であり、この基準を順守することが望ましいと考えられた。

しかし、JC in症例でも術後病理学的ミラノ基準(pMC)を逸脱する症例(pMC out, n= 42)は、基準内症例(pMC in, n= 62)より有意に予後不良であった(5yDFS, 58% vs 78.1%, p= 0.0368)。術前pMC out 予測因子として、単変量で腫瘍個数, 腫瘍径, 術前治療回数, AFP, PIVKA-IIが、多変量解析でAFP (≥10ng/ml, OR=4.2)とPIVKA-II(≥100AU/ml, OR= 3.8) が独立因子として抽出された。

当科では進行HCC症例に対し、再発予防目的にドナー肝由来活性化リンパ球を用いた細胞療法を施行してきた。JC inかつpMC out症例で本細胞療法を受けた症例はpMC in 症例と予後同等(n= 17, 5yDFS 70.6%, p= 0.61)、細胞療法を受けなかった症例は有意に予後不良であった(n= 25, 5yDFS 48.9%, p= 0.0074)。

以上から、JCは優秀な拡大基準だが、予後不良群(pMC out)が存在する。術前因子から適格に予測し、追加戦略を立てることで、JCの拡大基準としての意義をより多くの移植患者にもたらすことができる可能性が示唆された。

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