移植
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Preformed DSA陽性腎移植症例に対する免疫グロブリン静注療法を用いた術前脱感作の経験
井手 健太郎大平 真裕田原 裕之谷峰 直樹今岡 祐輝佐藤 幸毅山根 宏昭井出 隆太築山 尚史小野 紘輔望月 哲矢荒田 了輔箱田 啓志田中 友加大段 秀樹
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s356

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抄録

 我々は2009年よりPreformed DSA陽性腎移植症例に対してリツキシマブ・ボルテゾミブを用いた段階的脱感作療法を、当院倫理審査委員会の承認のもと最適医療の観察研究として実施している。この度、段階的脱感作療法の対象外である、低力価Preformed DSA陽性症例に対して、免疫グロブリン静注療法(IVIG)を用いた術前脱感作を経験した。

 症例は50代男性。2型糖尿病と慢性C型肝炎のため近医で加療を受けていたが、糖尿病性腎症の悪化を認めたため、夫婦間先行的腎移植を希望され当院へ紹介となった。CDC-XMはT cell, B cellともに陰性、FCXMもT cellは陰性であったがB cellは陽性、抗HLA抗体特異性同定検査でMFI 1,500のClass II抗体を認めたため、手術1週間前よりタクロリムス、ミコフェノール酸モフェティルの内服を開始、1g/kg IVIGを1回投与、術前DFPPを2回施行し腎移植を行った。術後は特に問題なく、3ヵ月目と1年目のプロトコール腎生検でも異常所見は認めず、現在までPreformed DSAは陰性が維持されている。

 低力価DSA陽性症例に対する術前脱感作の要否について、現時点ではコンセンサスは得られていない。IVIG + DFPPは低力価DSA陽性症例に対する術前脱感作療法の選択肢の1つとして成り得るが、投与回数や投与スケジュールなど、更なる症例の蓄積による検討が必要である。

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