2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s357
抗ドナー抗体(DSA)陽性腎移植後に抗体関連型拒絶(ABMR)を経験することがしばしばある。ABMR発症例の臨床成績はDSA陰性腎移植やABMR非発症例と比較して劣るため、ABMRを予防するための脱感作療法は重大な課題である。
本邦では、2019年12月にDSA陽性腎移植の脱感作療法として、高用量免疫ブロブリン静注療法(IVIG)が保険適用に追加された。これにより腎移植前IVIGが一般的な治療法となり、その効果が期待される一方で、適切な投与方法や副作用対策などの問題もある。
当院では保険収載前に4例、保険収載後に6例のDSA陽性腎移植症例に対してIVIGを用いた脱感作を行った。保険収載後、最初のプロトコールでは腎移植手術2週間前からIVIGを合計3g/kg投与していたが、副作用による移植手術の延期やABMRを経験し、移植直前の超高用量IVIG投与が副作用や脱感作の効果の点で不利と考えられた。
このため現在の脱感作プロトコールでは、IVIG合計4g/kgを、投与間隔を空けて投与している。当院のこれまでのIVIG症例の経過について振り返り、適切な脱感作療法について考察する。