2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s515
【背景】
MYH9遺伝子異常によるEpstein症候群(ES)は、巨大血小板性血小板減少症に進行性腎炎を伴う疾患であり、重症例では末期腎不全に至る。近年、MYH9遺伝子の一塩基多型の2型糖尿病発症への関与が報告されている。
【方法】
当科で生体腎移植を受け、4年以上が経過したESの男性4症例(症例A,B,C,D)について、後方視的に移植後の耐糖能障害を調査した。
【結果】症例A,B,C,Dの移植時年齢はそれぞれ35,15,17,19歳だった。遺伝子型は全例で最重症型の変異だった(症例Aのみp.S96L、その他はp.R702C)。移植前精査時のHbA1cは全例で正常域、移植前精査時のOGTTは症例Aのみ境界型でその他は正常型であった。全症例で移植後の維持免疫抑制薬はmPSL、Tac、MMFの3剤を中心に管理され、移植腎機能は比較的良好に推移していた。症例A,B,Cは移植後2年以内に腎移植後発症糖尿病と診断され、mPSLとTacの減量およびDPP-4阻害薬の投与がなされた。症例A,Bでは移植後6年目以降にHbA1cの急激な増悪を認めたため、TacをCsAに変更するなどの調整をしたが、血糖管理が改善せずインスリン自己注射の導入を要した。
【結語】
生体腎移植後のESの75%で腎移植後発症糖尿病が認められた。一般的な腎移植後患者と比較して若年でありながら有病率が高く、MYH9遺伝子異常が移植後の耐糖能障害の悪化に関与した可能性が疑われた。ES患者においては、腎移植後発症糖尿病に注意が必要であると考えられた。